母を探して
レイン達を乗せた船は南東のコロボス廃港へと入った。商船であるため、当然だが迎える人はない。にしても、あまりにも活気がない港だった。本当にここで人が生活を送っているのかも疑わしいぐらいに寂れていた。
「じゃあ、俺たちは荷物を届けてくる。船が出るまで待っててくれ」
そう言って商船の主は乗組員と一緒に荷を持って行ってしまった。
「仕方ない、少しそのへんを見て回るか」
船で待つ、といっても彼らの帰りがいつになるかわからない。レインの意見にラスウェルもフィーナも合致し、いったん船を降りることにした。
「ここがコロボス島か。なんか寂しげなところだな」
レインは補修のされていない、ボロボロになった家々を見ながらそう言った。
「昔はクリスタルの採掘で栄えていたらしいが......。今はすっかり廃れてしまったようだ」
ラスウェルもそう言って辺りを見回した。
「人がたくさんいるところもいいけど、私はこういう雰囲気も好きだよ!」
フィーナはいつもの調子でそう言って二人に笑顔を向けた、その瞬間、
「きゃぁあああー!!」
三人の耳に突然甲高い叫び声が飛び込んできた。
「女の子がゾンビに!」
ラスウェルがそう言った視線の先で、小さな女の子が数体のゾンビに囲まれていた。
「助けるぞ!」
レインがそう言って飛び出したと同時にラスウェルも剣を抜き、女の子の前に立ったかと思うと迫り来るゾンビ達をあっという間に打ち倒した。
「大丈夫かい?」
「う、うん! ありがとう!」
レインが振り返り声をかけると、助けられた女の子は一瞬間を置いて小さく礼をした。
「こんなところで何をやっているんだ?」
「お母さんが遺跡に出かけたまま帰ってこないの。だから迎えに行こうと思って......」
ラスウェルの問いに対し、そう答えてうつむく女の子。しばらく考えた後、レインの方を向いたラスウェルは、
「レイン、この子1人では危ない。一緒に遺跡まで行ってやろう」
と切り出した。
「ああ、そうだな」
「うん! それがいいと思う!」
レインもフィーナもその意見に当然のように賛成した。
「君、名前は?」
ラスウェルがそう聞くと、
「私はエマ! お兄ちゃんたちと一緒なら安心だよ!」
とその小さな女の子は元気よく答えた。波の音しか聞こえてこないような廃れた島ではあったが、子どもの明るい声が響くだけで町に生気が戻ってきたかのようだった。それはたった一瞬だけではあっても。