城へ、一刻も早く
城の北へと回り込み、地下道へと入るレインとラスウェル。
「さて、城内への最短コースを最速で突っ切るぞ」
レインはそう言って道順を確認しながら歩く。
「地下道は入り組んでいる。迷うなよ」
ラスウェルがそう言うと、レインは親指を突き立てながら、
「問題ないさ。ここは俺の庭のようなもんだし」
と言った。さらに続けて、
「訓練をさぼって逃げるときはいつもここを利用していたからな」
と言うと、ラスウェルは複雑な表情を浮かべながら、
「この騒ぎが終わったら、地下道への出入りは厳重に管理することにしよう」
と言ってレインを置いて先に歩き始めた。
「ええ? そりゃないだろ」
レインはそう言ってラスウェルを追いかけた。
先に進むと、やはり地下道の中にもモンスターが潜んでいた。
「こいつら俺たちが城内に行くのを邪魔しているみたいだ」
「まさか......。モンスターが意思を持っているのか?」
ラスウェルはレインが言ったことがにわかには信じられなかったが、レインはモンスターを倒しながら、何かを確信するように言った。
「このモンスターたち、統制された動きをするぞ。襲ってくるタイミングや出現する場所に戦略的なものを感じる」
「つまり、こいつらを操る何者かが存在しているということか?」
「ああ。問題は誰がモンスターを操っているのかってことだ」
まだ状況がつかめないラスウェルに対して、レインははっきりとそう言ってモンスターを倒していく。
「まだ門は無事だろうか」
目の前の敵を倒しながらも、城門の守りを気にかけるラスウェル。
「グランシェルトの守りが堅い理由は、強固な門の存在だけじゃない。民や陛下を守るため、日々腕を磨く騎士が揃っているからだ。仮に門が破られても簡単に城が落ちたりはしないさ」
「ああ。そう信じたいな」
城を守る心強い仲間達がいる。彼らを信じ前へと進むレインだったが、ラスウェルはどうにも不安を拭い去ることができなかった。地下道の奥へと続く道の前の水路にさしかかった二人。すると突然ここでも立ちふさがるように襲いかかってきたのは、水棲系のモンスター、シャークだった。しかし、城へと急ぐ二人の敵ではなかった。
「地下道の奥から妙な気配を感じるな」
「俺もだ。嫌な胸騒ぎがする」
「モンスターが待ち構えているってところか」
二人とも無事にはこの地下道を抜けさせてもらえそうないと、そう感じていた。
「レイン、そろそろ地下道の奥だ。準備を整えろ。ヤバそうなモンスターがくるぞ」
「ああ。わかってる。さくっと倒して早く地下道から出たいぜ」
レインはそう言って、さらに剣先に意識を集中させながら進むと、とてつもなく巨大な影が水面に浮き上がってきた。
「なんだ!? こいつが親玉なのか!?」
「......イカ......みたいだな?」
「イカなら海にいろってんだ! 倒すぞ、ラスウェル!」
巨大なイカのようなモンスター、シュトロームの触手をかいくぐり、斬り込んでいくレインとラスウェル。水棲系のモンスターの弱点をすでに見抜いていた二人は、ビジョンの戦士の力も借りつつ、危なげなく撃破する。
「よし。これで地下道のモンスターは片付けたぞ。後はその先の階段を上がればグランシェルト城内だ」
そう言って出口である階段へと向かうレイン。
「陛下は無事だろうか......」
「やけに静か過ぎるな。注意して進むぞ」
地下道に本来いるはずのないモンスターを倒して、さらに不安が募るラスウェル。レインも警戒を強めながら、地上へと上がっていった。