六盟傑の影
「へ~、ここがグランポートかぁ」
ザデール砂漠を越え、レキオス丘陵を抜けて三人がたどり着いたのは、今まで見た中でも特に大きく賑わっている港だった。あちこちでバザーも開催されているようで、人々が忙しく動き回っている様子を眺めながらレインはそう言った。
「すごくきれいなところだね!」
フィーナもそう言って、物珍しそうにきょろきょろとあたりを見渡していた。
「あのなあ、俺たちは観光にきたワケじゃないんだぞ」
相変わらず緊張感のない二人に釘を刺すようにラスウェルは言った。
「でも、ディルナド行きの船はまだ出発しないみたいだな。まあ、せっかくの港町なんだしさ、うまい魚でも食べて待つとしようぜ。陽炎花の蜜を飲んだとはいえ、ラスウェルにも休息が必要だろ?」
そうすらすらと言ったレインの言葉に、ラスウェルは何も反論ができなかった。いつもそうだった。座学は苦手なくせに、自分が楽しむ時の言い訳だけはやけに筋が通っていて言い返せないのだ。そしてレインは町のことに詳しそうな人を見つけると、早速声をかけた。
「あのさあ、ここら辺で魚を食べられる店ってないかな?」
声をかけられ振り向いた船乗り風の男は、横目であたりを確認し、険しい表情で言った。
「......あんたら、早くここを離れた方がいい。今、変なやつらがこの辺をうろうろしてるからな」
男は念入りにあたりを見渡すと、さらに声のトーンを落として続けて言った。
「全身を奇妙な鎧で覆ってる男がきたんだ。しかも、モンスターを引き連れてな」
それを聞いたレイン達はすぐにそれが何者なのか、予想がついた。
「モンスターを引き連れた鎧の男......。パラデイアの六盟傑、ヴェリアスか」
「バカな......。なぜこんなところにいるのだ? この近くにはクリスタルの神殿はないのに......」
ラスウェルはまさかこんなところで遭遇できるとは想像すらしておらず、船乗り風の男に近づくと、
「その鎧の男はどこで目撃されたんだ?」
と問い詰めた。
「ランゼルト遺跡の近くだが......。あんたら、行く気なのか?」
船乗り風の男はそう答えると、信じられないというような表情を浮かべた。
「ランゼルト遺跡か。奴の目的はわからないが......」
レインはそう言ってラスウェルとフィーナの顔を見やった。
「追いかけるしかないね!」
フィーナがそう答えると、レインとラスウェルはこくりとうなづき、北の雪山を見上げた。