人助けの理由
コロボス湿地を抜け、ゴーザス山嶺へと入ったレイン達。
「遺跡に行くにしてもナシャトの町に行くにしても......」
「この山を越えなきゃいけないってことか。やれやれ。こいつは大変だ」
ラスウェルとレインは目の前にそびえ立つ山々を見上げながらそう言った。
「それにしてもエマちゃんのお母さんはどうして遺跡に向かったんだ?」
レインがエマの方に振り返ってそう言うと、彼女は少しうつむき、寂しそうな表情を浮かべた。
「私のお父さんとお母さんは古代遺跡の研究員なの。2人でいろんな珍しい発見をしたんだよ。でも、お父さんは遺跡を調べてるときに事故で死んじゃって......。だから、今回の調査では......」
エマは涙を浮かべながらも、その涙をこぼさないように顔を上げ、続けて言った。
「お母さんはお父さんの分まで頑張るって張り切ってたの」
「そっか。じゃ、エマちゃんも頑張らないとな」
「うん!」
レインの力強い励ましに負けないぐらい、エマは元気よく返事をした。
「早速、モンスターが現れたぞ!」
「よし! エマちゃんを守りながら戦うぞ」
ラスウェルとレインはエマをかばうように前に出て剣を抜いた。
「エマちゃんは私の後ろに隠れてて!」
フィーナがそう言うと、エマはこくりとうなづき、フィーナの後ろに隠れた。
「でも、なんだろう。すっごく不思議な感じ」
「何が?」
いつもより張り切っている様子のフィーナを、レインはモンスターと戦いながら横目で見ながら言った。
「だって、私、エマちゃんと会ったばかりなのに......。エマちゃんの力になってあげたいって思ってるの。なんでなんだろ? 不思議だな~」
そう言いながら、エマを守りながら次々とモンスターを倒していくフィーナ。
「うーん。どうしてかな。どうしてかな。どうして、私はエマちゃんの力になりたいって思うんだろ?」
「フィーナ。そういうもんなんだよ。困ってる人を助けるっていうのは。特に理由なんてなくてもしてしまうもんなんだ」
「へえ、そうなんだ! 面白い!」
レインにそう言われ、ますます張り切って進むフィーナ。すると、山頂の方から大きな影が迫ってきた。
「あっ! なんか大きいのが飛んでくる! レイン、すっごく大きい鳥だよ!」
そう言ってフィーナが指差した先で、巨大な鳥系モンスター、トートエイビスが威嚇するように翼を大きく広げていた。
「そりゃ大きいさ。あれは鳥じゃなくてモンスターだ」
「ええっ!?」
「気を付けろ! くるぞ!」
ラスウェルがそう言って剣を構えると、トートエイビスは真正面から突っ込んできた。羽ばたくだけであたりに砂が舞い、大きなくちばしでレイン達を執拗に攻撃してきたが、岩場の地形を活かしながら、倒すことができた。
「よし。さあ、先に進むぞ」
レインがそう言って剣をおさめると、フィーナの後ろに隠れていたエマが顔をひょっこり出した。
「大丈夫? 怪我とかしてない?」
「俺たちの心配はいい。エマは自分の身を守ることだけを考えていろ」
「う、うん。ありがとう、ラスウェル」
エマはそう言うと、またフィーナの後ろへと回った。フィーナは笑顔でエマの頭にポンと手を置き、レイン達に続いた。